文化財保護事業及び郷土資料館の現状

*質問資料


*牧みゆき
一つ目のテーマは、本市の文化財保護事業の現状について伺います。

本市には、国指定重要文化財である西宮神社の表大門や瑞寶橋などの建造物をはじめ、関西学院大学時計台、旧甲子園ホテルなどの近代建築物、神呪寺の木造如意輪観音坐像などがあります。さらに、西宮砲台や具足塚古墳などの史跡、だんじりやえびすかきなどの無形文化財、天然記念物の海清寺の大クス、越木岩神社、日野神社の社叢林など幅広く多彩で、歴史的・文化的に貴重な文化財が数多く受け継がれています。世代を超え人々と共に暮らしの中に息づき、地域の誇りや絆を育んできたこれら文化財は、西宮の歴史や文化の厚みを実感させる貴重な資産であると同時に、市民にとってかけがえのない共有の財産です。

これらを守り、受け継ぐ重大な役割を担うのが文化財保護事業ですが、極めて厳しい財政状況にある本市では、着手できていない事業が複数存在しているのが現状です。

例えば、市指定重要文化財である神呪寺の仁王門、八幡神社本殿、旧辰馬喜十郎住宅は、いずれも早急に修復が求められる状況にありながら、着手できていません。文化財は生活に直結する施策とは異なるため後回しにされがちですが、需要と供給では測れない価値を持つ存在です。現状を保ち、守り、後世に伝えていくことは市の責務であり、修復の先送りは唯一無二の財産の喪失につながります。

修復の遅れに加えて深刻なのが、文化財の保管場所の問題です。現在、本市の歴史博物館である郷土資料館では、遺跡から発掘された出土品の保管場所が不足しています。今年6月に館内を視察すると、保管庫がいっぱいのため出土品の入ったコンテナが職員通路などに積まれている状況でした。これらは、埋蔵文化財の保管管理上極めて望ましくありません。

加えて、本市では中央運動公園再整備に伴う埋蔵文化財の本発掘調査が決定、今月開始される予定です。しかし、西宮社頭遺跡など現在進行中の発掘調査等で出土したものを保管する場所すらないのが実情です。さらに、現存の保管庫も津波に弱い地下倉庫やシャッターで区切られただけの倉庫など災害に対しても脆弱な状況にあるのも問題です。

資料の表を御覧ください。

郷土資料館の専用面積は、保管庫含め997平方メートル、本庁舎周辺再整備構想によれば、将来的に本庁舎へ移転する予定ですが、その正確な時期やどれだけの面積を充てられるのかも示されていません。遺跡の出土品の保存場所が不足し逼迫している一方で、市全体での施設総量は縮減していかなければならない。こうした状況をどう調整するのか、将来的な構想を具体化し、明確な方針を定める必要があります。

同時に、不足した保存場所など差し迫った課題についても、学校の空き教室など市保有の施設から適切な場所を洗い出し整備するなど急ぎ対応するべきです。

また、保護対象が増える一方の文化財事業は、他自治体でも同様の課題を抱えています。本市は、基金の創設や民間財団から資金提供を募るなどの取組を進めていますが、根本的な解決には至っていません。したがって、分散、整理など保管の在り方も見直すとともに広域での保管や他市との連携協議、さらには国・県への協力要請も視野に入れ検討するべきと考えます。

当然、外部に頼るだけでなく、市自らも財源の創出や機運醸成に努めていく必要があります。例えば、中央運動公園で開催予定の本発掘調査の現地説明会に加え、ふるさと納税の返礼品として発掘調査の模擬体験を提供する、工事現場の仮囲いに遺跡や地域の歴史、民話を描き展示する、新中央運動公園で展開する体験メニュー、公園内での展示や設置物へ歴史的・文化的な観点を取り入れるなどを提案します。発掘調査はセンシティブな作業で、模擬体験導入には慎重さも必要ですが、複数の先行事例もあり、参考にしながら検討すべきです。

横浜市神奈川区では、2000年頃、駅前の整備の工事仮囲いに民話を絵巻物風に展示。20年以上経た今も住民の記憶に残っています。また、本市の広田神社をはじめ六甲山系の神社群は古事記以前の歴史書や祝詞に登場する瀬織津姫を祀る伝承の地として、昨今、注目を集めています。

このように、遺跡をはじめとする歴史的・文化的観点における本市のポテンシャルの高さを改めて認識し、それらを引き出すことで醸成される機運は、文化財保護の基盤となり得ます。さらに、文化振興や本市独自の価値の創出にもつながると考えます。

以上を踏まえ、質問します。

①埋蔵文化財の保存場所を適切に確保するため、将来的な保管場所の明確化や分散、整理、広域での保管、国・県・他市との連携協力など多様な施策を早急に進めるべきと考えるがどうか。

②ふるさと納税への遺跡発掘体験の導入、工事仮囲いへの民話等の展示、新中央運動公園事業における歴史的観点からの体験メニューや展示、設置物の導入など文化財保護やその機運醸成に資する事業を積極的に展開してはどうか。

 

◎産業文化局長

1番目の文化財保護事業及び郷土資料館の現状についての御質問にお答えします。

まず、保管場所の確保や保管の在り方などについてですが、現在、市内には文化財保護法――以下「法」と申します。法に基づく周知の埋蔵文化財包蔵地が108か所ございます。いずれも西宮の成り立ちに関する重要な歴史資産であり、法により国民共有の財産として規定されています。そのため、土木工事などで遺跡の破壊が避けられない場合には、遺跡の情報を後世に検証可能な状態で伝えることが求められています。

本市においては、近年、開発事業などに伴う発掘調査が増えており、出土品が増加しています。出土品などを適切に管理、保管するためには、復元作業などを行うスペースが必要で、自然災害の影響を受けにくく、復元作業により立体的になった出土品を収蔵する施設と遺物の整理場所も必要です。

議員御指摘のとおり、現状においても保管場所が不足している状況ですので、一例ですが、学校の空き教室を利用するなど一時的な保管場所の確保について中央運動公園の出土状況を考慮しつつ、スピード感を持って検討し、関係各課と調整を図っていきたいと考えています。

また、中央図書館移転後の郷土資料館の在り方についても議論を深めていく必要があると考えています。展示スペースはもちろんのこと、課題の筆頭である出土品の保管・整理場所について施設総量の削減を基本とする施設マネジメントの観点を踏まえつつ、図書館の移転時期も考慮しながら庁内での調整を図ってまいります。その際は、郷土資料館の役割、機能などに照らし、将来的な構想を念頭に置きながら計画的なスケジュールとなるよう検討してまいります。

なお、国・県・他の自治体との連携協力などについては、現在、具体的な動きはありませんが、情報収集などを行ってまいります。

次に、財源確保と機運醸成についてお答えします。

地域の歴史に関心を持ち、文化財の価値を理解する市民を増やすことは、文化財保護やその機運の醸成につながり、現在、発掘調査中の中央運動公園の事例は、そのよい機会であると考えています。御提案いただきました遺跡発掘体験ですが、現場は湧水が多く、深さも5メートル近くになるため、安全面から実施は難しい状況です。ただし、現地説明会については安全に配慮した上で、スケジュールなどを調整して実施する予定です。

また、現在、仮囲いを利用し、工事の進捗状況などをお知らせしています。さらに内容の充実に努めたいと考えていますが、御提案いただいた地域の民話などの掲出についても検討してまいります。今後、文化財の保護やその機運醸成に資する郷土資料館の事業として、展示などの実施だけでなく、文化財に直接接することのできる体験型の事業とするなど、効果的な実施手法の検討を進めてまいります。

その際には、文化財保護に資する寄附金として参加費を徴収することやふるさと納税の体験型返礼品として実施するなど、財源確保の観点も併せて検討してまいります。

以上でございます。

*牧みゆき
文化財保護事業について、意見要望を申し上げます。
本市には、指定文化財以外にも歴史的・文化的に価値があるものが多く存在しています。当初は、その保護について伺う予定でしたが、職員通路に積まれた出土品に象徴されるように、文化財を扱う作業場や保存環境の不備といった目下の課題が深刻で取り上げざるを得ませんでした。保管庫の問題は、将来的な方針を定める上で郷土資料館の在り方に直結します。増え続ける文化財と施設マネジメントの観点から難しさは理解しますが、長期的ビジョンが示されないまま場当たり的な対応に終始することに、文化財に対する文教住宅都市西宮としての姿勢が問われていると感じています。計画的な対応となるようスケジュール感を持った協議を重ねていただきたいと思います。
また、文化財保護の課題は各自治体に共通していることから、他市との連携や国・県への協力要請についても積極的に取り組むよう強く要望します。

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