◇牧みゆき
西宮市インフルエンザ等対策行動計画の改定に向けて伺います。
本市では、来年夏の策定を目標に、西宮市新型インフルエンザ等対策行動計画の改定作業が進められています。この改定は、昨年7月に大きく改定された国の新型インフルエンザ等対策政府行動計画を基に今年3月に兵庫県の計画が改定され、それに準じ、市の計画とマニュアルを改定するものです。
私は、昨年9月の一般質問において、この国の計画が抱える課題と本市の感染症対策や計画改定に向け、必要な視点について取り上げました。質問で私が指摘したのは、次の大きく三つです。
一つ目、コロナ禍における感染症対策の検証が不十分なままに立てられた計画であることです。行動制限の効果と弊害、ワクチンの有効性や安全性、医療機関対応など社会に大きな影響を与えた施策の検証が十分でないまま、これらをより一層強化し、強力なワクチン接種体制が組み込まれている点を懸念しています。
二つ目は、マスク着用やワクチン接種の有無による差別、偏見や不利益の発生といった社会的課題が計画に位置づけられていないことです。保健所や病院職員への特定接種や市民への接種勧奨といった体制の下、感染者への差別防止は明記がされています。一方で、ワクチンやマスクの有無を理由とする差別、偏見については記載が見られません。
三つ目は、重要な事項にもかかわらず、言葉の定義、具体的に何をどうするのか示されていない項目が散見されることです。教育に関する内容や偽・誤情報の取締り強化が示されていますが、判断の基準や範囲が不明瞭です。曖昧さは混乱や対応のばらつきを招き、市民にとっては国からの突然の指示に従わなければならないという強制的なイメージに漠然とした不安が高まります。
これらの指摘に対し、市は個人の意思を尊重する姿勢を示し、様々な立場の市民に寄り添う前向きな答弁をしました。私は、これを高く評価するとともに市のこうした姿勢を行動計画に落とし込み、明記する必要があると考えてきました。改定された県計画でも課題は残され、国・県の計画をそのまま踏襲するだけでは不十分です。
そこで、市の改定に盛り込むべき重要な視点として、以下、四つを取り上げます。
第1は、国や県の計画に対し、実情や実態を反映させていくためのフィードバック機能の確保です。
計画の性質上、国や県の指示要請に従って対策を講じるものの、市民生活への影響、状況を踏まえ、必要に応じて修正や改善を求める仕組みが不可欠です。各対策の反応、有効性について短い周期で把握し、国・県へフィードバックする現場発のPDCAサイクルのようなもの、例えば、相談窓口の件数分析、ワクチン接種後の副反応報告、施策実施後のアンケートやSNS解析などを定点的に集計、分析した結果を国に還元し、指示内容を実態に沿って修正していくような仕組みが必要と考えます。
第2は、平時からの双方向的なコミュニケーション体制の構築と整備です。
計画では、平時、緊急時ともに市民の双方向のコミュニケーションとその体制構築について記されており、ここが市計画において最も重要と考えています。平時から市民を対策のパートナーと位置づけ、継続的に感染症対策や計画について発信する一方、市民の質問や懸念を受け止め相互理解を深めていくことで、初めて本計画を機能させることができます。市の計画改定に当たり、国・県の計画に寄せられたパブリックコメントなども参考に、市民が何を不安に思い求めるのかを把握し、市計画に生かしていくのもその一つです。
また、多言語、音声、字幕対応での情報発信や各種媒体を通じ、定期的な意見聴取を行うなど幅広く積極的にコミュニケーションを重ねる必要があります。
第3は、ワクチン接種に関する公平かつ迅速な情報提供です。
昨年の市答弁にもあった接種の自由意思の尊重は、守られるべき大原則です。感染症対策含め、ワクチンの有効性や安全性については、時間とともに評価や説明が変化してきました。当初は強調された効果が後に修正され、推奨していた専門家からも感染予防効果は乏しいという発言が見られるなど健康被害の多さも含め、実態は徐々に明らかとなっています。ワクチンの接種実施主体は市町村であり、市はその責任を負います。市は実施主体として接種勧奨を行う立場にありますが、しかしその一方で、安全性や有効性については、国の情報に依存せざるを得ません。
資料2ページを御覧ください。
健康被害が起きた場合の救済制度にも課題があります。認定には時間を要する上、不支給となった場合の不服申立て制度では、認否を行うのは国であるにもかかわらず、申立ての窓口は都道府県となります。結果、認否に関する不服は返答不可となるなど市民に寄り添えない仕組みとなっています。こうした課題を抱えつつ接種事業を運用せざるを得ないのが現状です。であるからこそ、市は接種実施主体として公平かつ迅速な情報提供を行い、市民が納得のいく判断を行えるよう支えることが市が果たすべき責務です。
本市は健康被害の参考値として、2023年10月から救済制度の申請・認定件数を継続的に公表しているものの、制度上、公表までに時間を要し、判断材料としてはタイムリーさに欠けます。
一方、資料3ページにあります岡山県では、副反応報告を早期に公表しており、件数だけでなく、ワクチンの種類や重症度の内訳が示され、定期接種となっても継続して公表されています。こうした情報は、市民にとって有効な判断材料で、救済制度よりも早く公表できる点でも意義があります。さらに、年齢別の接種状況や分かりやすいリスク・ベネフィットの対照表といった情報も市ホームページやSNSで随時公開、更新し、市政ニュースや接種案内などにも掲載すべきですし、接種案内には、接種の自由や接種後の体調不良の早期受診の促しについても明示する必要があります。
第4は、差別、偏見防止と人権尊重に関する取組の明記です。
コロナ禍では、感染者の差別だけでなく、マスク、ワクチン接種の有無による差別や不利益が顕著になりました。本市は昨年の答弁で、差別防止のための周知を行う姿勢を示しましたが、これを計画に明記し、学校、職場、地域での啓発活動に反映させなければなりません。また、市職員が特定接種を受けない選択をした場合の人事上の配慮などについても事前に方針を定めておくべきと考えます。
以上四つは、いずれも市自らで考え、盛り込むべき内容と考えます。国・県の両計画には、市は住民に最も近い行政単位として役割を果たすと記されています。新興感染症という予測困難なものに一元的かつ緊急性を持って対峙していく本計画を有効なものとするため、市は地域の実情を踏まえ、国や県に対して必要な意見を述べ、それを国や県の計画に反映させる姿勢が求められます。
そして、市民に最も近い存在としてその責務を果たすため、解像度の高い具体的な取組を考え、計画やマニュアルなどに明記すべきです。計画策定前の今は、こうした意見を体系的に取り入れていける重要な時期であり、市の主体的な判断を強く求めます。
以上を踏まえ質問します。
1、地域の実情や実態を反映させていくため、市の意見等を国や県にフィードバックさせる仕組みをどのように構築しますか。その仕組みを計画に明記すべきと考えるがどうか。
2、市計画において、平時からの双方向的なコミュニケーションをどのように整備しますか、方策をお示しください。
3、ワクチンに関する情報提供について、接種案内の在り方や副反応疑い報告の件数とその内訳、年齢別接種状況、リスク・ベネフィット対照表など市が持ち得る情報のうち、接種判断に有効な情報の早期共有、その項目等を検討し、具体的に計画に明記すべきと考えるがどうか。
4、昨年答弁された、何人も人権が尊重され、偏見、差別、社会的不利益を受けることがあってはならない、との市の姿勢を明記し、接種を受けない選択をした職員の人事上の配慮、学校職場向けの差別防止策などを計画に入れるなど、市の方針を実効性のある条項として反映するべきと思うがどうか。
◎健康福祉局長
2番目の西宮市新型インフルエンザ等対策行動計画の改定についての御質問のうち、まず国や県の計画に対して、実情や実態を反映させていくためのフィードバックの仕組みについてお答えします。
現在、市では昨年度改定されました国や県の新型インフルエンザ等対策行動計画に沿って、西宮市新型インフルエンザ等対策行動計画――以下「市行動計画」と申します――及び市行動計画の下位に位置づける新型インフルエンザ等対策マニュアル――以下「マニュアル」と申します。マニュアルを全面的に見直し、令和8年7月の改定を目指して協議検討を進めているところです。
市行動計画につきましては、国や県の計画に沿って対応方針や役割分担などを中心にシンプルに記載する方針で具体的な運用等につきましては、マニュアルに定めることを予定しております。
また、今般の新型コロナウイルス感染症の対応経験等を踏まえ、新たな新型インフルエンザ等の感染症が発生した際に、市が適切に感染症対策を進めていく上で地域の実情等を踏まえた市の意見等を国や県にフィードバックする仕組みは必要であると考えております。
このことからフィードバックを担う専任部署の明確化など具体的な仕組みについて協議検討を行いマニュアルに記載してまいります。
次に、平時からの双方向的なコミュニケーションをどのように整備するかについてですが、緊急時における市民等との双方向のコミュニケーションを行う上で、平時より多言語や音声対応など様々な情報発信を行うことにより、幅広い市民の意見を取り入れることができるような仕組みづくりが重要であると考えております。
今後は、議員の御提案を踏まえ、ホームページや市政ニュース、SNSを活用した感染症に関する情報発信、市民の声や電話等による市民等からの意見の聴取、また双方向のコミュニケーションが可能な出前講座など平時からの市民等との双方向のコミュニケーションの在り方について改定時のパブリックコメントなども踏まえ協議検討してまいります。
次に、ワクチンに関する情報提供についてですが、国が令和6年7月に全面改定を行った新型インフルエンザ等対策政府行動計画において、市町村は国が情報提供・共有する予防接種に係る情報について住民への周知、共有を行うこととされており、市民の接種判断に有効な情報を示すことは、市としても重要と考えております。
接種案内につきましては、新型コロナワクチン特例臨時接種の際もワクチン接種が強制でないこと、体調に異常を感じた場合は速やかに医師に連絡することを接種開始の早い段階から記載しており、市が今後作成するマニュアルにおいて、当時の接種案内を参考資料として掲載することを検討しております。
また、今回の議員の御提案を踏まえ、ワクチン接種によるリスクとベネフィット、年齢別接種状況及び副反応疑い報告の件数とその内訳など接種判断に有効と考えられる情報を市民の皆様に分かりやすく、かつ速やかに提供することについて、市のマニュアルに記載することを検討してまいります。
最後に、差別、偏見の防止と人権尊重に関する取組の明記についてですが、市行動計画では、偏見、差別等に関する啓発の項目において、感染症は誰でも感染する可能性があるもので、感染者やその家族、医療従事者、マスク未着用者やワクチン未接種者、社会的背景を持つ人たちなどに対する偏見、差別は許されるものでなく、何人も人権を尊重され、偏見、差別、社会的不利益を受けることがあってはならないこと、さらにはこういった偏見、差別等は法的責任を伴い得ることや患者が受診行動を控えるなど感染症対策の妨げになることなどについて啓発する旨を記載することを検討しております。
また、国や県と連携しながら、偏見、差別等に関する各種相談窓口を整理し、市民等に周知する旨を記載することにつきましても検討してまいります。
以上でございます。
◇牧みゆき
新型インフルエンザ等対策行動計画の改定について意見要望します。
各項目とも前向きに受け止め、善処いただけるとのこと、感謝申し上げます。来年春頃には議会に諮られる予定とのことですが、本日申し上げた観点が反映され、より具体的な内容が示されることを期待します。
また、計画が実効性あるものとするには、平時からの取組が欠かせません。感染症対策は、市民の生命に直結し、判断が難しく、センシティブな内容も多く含みます。完璧な計画をつくること以上に、ふだんからのコミュニケーションを密にし、市民との信頼関係を築いておくことが重要です。今回の改定を契機に、平時の取組の見直しと充実に取り組まれることを強く要望いたします。